アドネットワーク、アドエクスチェンジ、DSP、SSPの仕組み

アドネットワーク

アドネットワークとは

2008年頃から出てきた、広告媒体のWebサイトを多数集めて「広告配信ネットワーク」を形成し、多数のWebサイト上で広告を配信する広告配信手法である。多くのWebサイトを媒体とすることで、全体では多くのトラフィック量を確保することが可能で、広告主にとって大きなメリットがある。媒体側から見ても、アドネットワーク事業者に受注、掲載の手続き等を任せることができるので、両者にとって大きなメリットがある。

アドネットワークという「広告配信ネットワーク」に入札という形態で広告配信することで、広告主は多数のWebサイトに一括で広告を配信することが可能になった。ただ、いいことばかりだけでなく、ブランディングとしてマイナスなサイトに掲載されたり、自社のターゲットとは全く関係のないサイトにも掲載される可能性もあり、特定のサイトに広告を掲載しないようにする仕組みも取り入れられた。

アドネットワークがなかった時代に広告主が抱えていた課題

1.1つ1つのWebサイトに広告掲載をお願いしないといけない
2.良い広告媒体(Webサイト)を自分で探さないといけない
3.課金形態がバラバラで、媒体の選定が難しい
4.媒体から提供されるデータもそれぞれ違い、媒体間の比較が難しい
5.媒体から提供されるデータの信憑性

メディア側も広告主からクリエイティブを受け取ると、Webページにベタ貼りするような運用が多かったので、それなりの工数がかかっていた。自社でアドサーバー保有する大手のメディアは、広告在庫の管理が柔軟に行えるが、それでも、「広告枠を販売するための営業コスト」や「在庫リスク」の課題があった。

トラフィック

トラフィックとは、通信回線上で一定時間内に転送されるデータ量のことである。通信回線の利用状況を調査する目安となる。たとえば、「トラフィックが増大した」といった場合は、通信回線を利用するデータ量が増えた状態を指す。

アドネットワークの仕組み

■広告主にとってのメリット
アドネットワークに入札するだけで、ネットワーク加盟サイトに広告配信できる
インプレッション、クリック、CTR、CV、CVRなど効果測定データを入手できる
効果測定データは第三者(アドネットワーク事業者)が集計したものなので信憑性がある
ネットワークに配信することで、大規模な広告配信が可能
課金形態が統一(クリック課金型、インプレッション課金型)
サイトのジャンルを絞ることで広告とある程度関連性のあるサイトに配信できる
リターゲティング配信、時間指定配信など、効果を上げるためのメニューがある



■Webサイト(媒体)にとってのメリット
ネットワークに加盟することで中小サイトでも顧客を得ることができる
タグを自サイトに貼り付けるだけなので、販売の手間がかからない
クリック数などは全てアドネットワーク事業者(アドサーバー)が計測する
1つの広告枠に対して複数の広告が掲載できる → 売れ残りの可能性が低くなる


ターゲティング配信とノンターゲティング配信

配信先を指定せず全媒体へ配信する「ノンターゲティング配信」と広告主やアドネットワークの保有情報に基づき配信する「ターゲティング配信」がある。ターゲティング配信の中でも「広告主の保有情報」を使ったターゲティングと「アドネットワークの保有情報」を使ったターゲティングの2種類のターゲティングがある。

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リターゲティング

アドネットワークを使った広告では、多種多様なジャンルの広告や広告媒体が混在しているため、広告配信効果を最適化する技術として、Cookieのデータをもとにユーザーの傾向を分析する行動ターゲティング広告(BTA)が導入されているケースがほとんどである。

その中でも、最も有名なターゲティングが「リターゲティング」である。これは、1度自社のWebサイトに訪問したユーザーに対して広告を配信する仕組みである。1度Webサイトに訪問したユーザーは、何かしらの経路でそのサイトに興味を持ったユーザーだ。このユーザーに対して広告を配信するということは、興味関心レベルの高いユーザーにアプローチしていることになるため、有効なターゲティング手法だと言える。

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アドサーバ

アドサーバーとは、ホームページに 広告を配信するためのサーバーのことである。 広告配信事業者が独自の アドサーバー保有し、 コンテンツ提供者はその アドサーバーへのリンクという形で 広告を展開する。アドサーバーには、入稿・配信・枠管理・効果測定・販売・データマネジメントなど様々な機能がある。単に 広告を配信するだけでなく 広告の インプレッション数やクリック回数などの情報を収集・記録しており、成果の分析や配信の調整が容易に行えるようになっている。

アドエクスチェンジ

アドエクスチェンジとは

アドネットワークが登場してから約2年後、2010年頃に「アドエクスチェンジ」という広告取引市場が登場しました。アドエクスチェンジは広告枠をインプレッションベースで取引する市場であり、需要(広告主)と供給(メディア)のバランスからインプレッションごとに広告枠の価値を評価して価格を決定する。

広告主から見ると、アドネットワークでは「クリック課金型」「インプレッション課金型」など、ネットワークにより課金形態が異なることも多いが、アドエクスチェンジという広告取引市場によって、“入札方式のCPM課金型(広告枠単位)“で仕様が統一された。

リアルタイム入札(RTB)

アドエクスチェンジのうち、広告枠のインプレッションが発生するたびに競争入札を開始し、最も高い金額をつけた購入者の広告を表示するといった方式が「リアルタイム入札(RTB)」と呼ばれる。1番高い金額と言っても、実際はその価格で落札するのではなく、多くは、2位の入札額+1円が落札額となる「セカンドプライスビッディング」と呼ばれる方式がとられる。これは落札額が無暗に高くならないようにするためであり、リスティング広告など入札型の広告ではよく利用される仕組みである。

セカンドプライスビッディングにおいて、フロアプライス(最低入札額)以上での入札が1件だった場合、落札価格はフロアプライス+1円になる。メディアはフロアプライスと呼ばれる最低入札額を設定でき、これに満たない入札額の広告を配信しないことができる。この仕組みにより、低い価格しかつかなかった広告枠(インベントリ)を純広告などの他の広告枠として利用することが可能になる。

アドエクスチェンジでは、ネットワーク単位やメディア単位ではなく、広告枠単位で価格が決まる。

オーディエンスデータ

オーディエンスデータとは、ユーザーのWeb上の行動履歴から“その人(Cookie)がどんな人なのか?”を推測したパーソナルデータのことである。データエクスチェンジャーと呼ばれるデータエクスチェンジを行う事業者が、複数のポータルサイトと提携し、ユーザーのセグメンテーションを行い、オーディエンスデータ(セグメント情報)として販売する。実際のユーザーのWebサイト訪問履歴が公開される訳ではない。

オーディエンスデータを提供しているポータルサイトなどが、自社のWebページの訪問者Cookieリストをデータエクスチェンジャーに販売する。データエクスチェンジャーは、購入したオーディエンスデータのセグメンテーションを行い、そのセグメントデータを広告のターゲティング利用を目的として、アドエクスチェンジやアドネットワークに提供(広告配信側に販売)するという流れになる。

これまでは、広告とメディアの親和性など「枠」でのターゲティングがメインだったが、オーディエンスデータを利用することにより、ユーザーの行動履歴の特徴から「人」をターゲティングして広告配信することが可能になった。このオーディエンスデータを用いた広告ターゲティングのことを「オーディエンスターゲティング」と呼ぶ。

DSP/SSP

DSPの概要

オーディエンスターゲティングが登場したちょうど同じ時期、複数のアドエクスチェンジやネットワークを一元管理する広告配信のプラットフォーム「DSP(Demand-Side Platform)」、広告収益の最大化を目的とした媒体側のプラットフォーム「SSP(Supply-Side Platform)」が登場した。これを利用すると、広告主は、複数のアドエクスチェンジ、複数のアドネットワークに一括して広告配信が行える。

DSPは、広告主や広告代理店のためのシステムで、広告インベントリの買い付け、広告配信、掲載面、クリエイティブの分析、入札単価の調整、オーディエンスターゲティング等、広告主のためにあらゆる最適化をシステマティックに行い、複数のSSPとRTB接続することで、広告インベントリを必要とした時にリアルタイムで入札に参加する。

SSPの概要

DSPとは逆に、こちらは媒体側の収益を最大化させるためのプラットフォーム(Supply-Side Platform)である。インプレッション毎にeCPMを算出し、1番高額と判断された広告が配信される仕組みある。基本的には、広告枠に対して最も高値を提示した広告が表示されるが、それ以外の落札決定要因として、入札価格以外にビットレスポンスなどがある。これは、RTBの仕組み上、表示する広告を瞬時に決定する必要があるためである。

入札 ~ 広告掲載までの流れ

ユーザーがWebサイトに訪問し、広告枠が存在するWebページが表示されたら、まずSSPが広告リクエストを受け、DSPにビッディングをリクエストする。各DSPDSP内でオークションを行い、DSPごとに1つのクリエイティブが決まる。その結果をSSPに返し、SSPは「各DSPで勝利したクリエイティブ同士」でオークションを行い、最終的に表示するクリエイティブ(DSP)が決まり、その結果(勝者DSP)をリクエスト元に伝える。

必ずしも入札額が高い広告が選ばれるわけではない。例えば、ユーザーがWebページに訪問して広告が表示されるまでの時間は0.1秒程度である。この時間内でレスポンスをしないといけないので、DSPのビットレスポンスの速さなども関係し、CVRの高さも影響する場合がある。

フロアプライス(最低入札額)を設定していることが多く、この額以上の入札でないと広告が表示されない。セカンドプライスビッディングでフロアプライス以上の入札が1つの場合は、フロアプライス+1円が落札額となる。リクエスト元はSSPから勝者DSPのタグを受け取り、勝者DSPに広告リクエストする。DSPはそのリクエストに応じて、広告クリエイティブをリクエスト元に配信する(具体的には、クリエイティブを呼び出すためのHTMLコード)。


参考:アドテクの仕組みと成功事例まとめ|デジタルマーケティングラボ